「アメリカ先端企業の大逆襲が始まる」BART 1993.11

「アメリカ先端企業の、大逆襲が始まる」BART 1993.11
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アメリカ先端企業の大逆襲が始まる(1993年)」は、日本がバブル経済に浮かれていた時期に、アメリカのハイテク産業がリストラ(人員削減)やリエンジニアリング(企業再設計)を通じて復活を遂げつつあった様子を詳細にレポートした記事です。

当時のアメリカのハイテク企業は、単なる人員削減ではなく、「組織改革」「技術革新」「市場ニーズへの即応性」を武器に、90年代初頭の不況から立ち直りつつありました。
当時の日本企業もこの「米国の大逆襲」に本気で対応しなければ、生き残れないと警鐘を鳴らす記事です。

基本情報

雑誌BARTの1993年11月の記事です。

『BART(バート)』は、1990年代に講談社が発行していた男性向け総合情報誌です。

概要

1993年の日本は、バブル崩壊後の混乱期に本格的に突入した年であり、政治・経済・社会の各方面で大きな転換点を迎えた年でした。
地価・株価の下落が加速し、企業の不良債権問題が顕在化。自民党が衆議院選挙で過半数割れで”55年体制の崩壊”などといわれた年です。
コンピュータ分野ではWindows 3.1が普及、日本でもPC(DOS/Vパソコンと呼ばれるPC)の個人利用が拡大したころです。
当時大学生の私もハードディスク容量170MbのIBM製PC、Windows 3.1を使用していました。

当時の日本は「安くて高品質な製品を作る国」として世界的に認識されていましたが、アメリカ製の格安パソコンの登場により、その信頼が揺らぐ時期です。
アメリカは製造業の空洞化が進んでいると思われていましたが、実際には企業再構築が進行していたことを、Intel、IBM、TI、COMPAQへのインタビューで示しています。

IBMは「リストラだけでは復活できない」ことを強調。技術革新と組織改革による競争力の回復を図っていました。
当時はまだパソコンを製造していた時期で、その後も事業売却など行い、今に至ります。

IntelはDRAMから撤退しMPU「Pentium」でスタンダードを目指していました。
そこ後Windowsの普及とともに広がりを見せます。
現在はライバルのAMDや、ARMなどのコア、TSMCなどの台頭で苦しい状態です。

TIは長期雇用を重視しつつも、従業員数を削減しながら業績を拡大。
DRAMからMPUなど高付加価値製品への移行を推進。企業改革に成功しています。

COMPAQは”コンパック・ショック”とよばれた日本製PCの半額の低価格商品の展開し、当時の台風の目となりました。
ただし後に低価格競争に巻き込まれ、2002年にHPに吸収合併されることになります。

企業によってはブランドが無くなったものもありますが、90年代から大いに活躍した企業です。

個人的なポイント

家電志向が高性能半導体開発の遅れになった?

「米国の半導体のニーズで最も大きいのはコンピュータです。これに対して日本では、家電製品のコンシューマーグッズ用(消費財)など半導体ニーズが大きかった。コンシューマーグッズは標準化した半導体で十分です。たから日本の半導体メーカーはMPUなどの特定用途向け半導体の開発が遅れてしまった」

TIの副社長が言っている言葉です。

確かに日本ではリーマンショックのころまでは家電部門の力が強く、家電向けの製品が多かったように感じます。

”スマホに代表される情報機材への投資が遅れたことが、競争力を失った原因の一つ”という意見も最近聞きました。

投資の不足、あるいは経営方針の間違いでしょうか。

「独創的な技術開発をするには…日本には20年近く時間が必要かもしれない」

とも言っていますが、韓国や台湾、中国の姿を見ると、だいぶ遅れを取っているようにも感じます。

TI副社長インタビュー記事
TI副社長インタビュー記事

1992年の半導体市場ランキング

1990年代までに日本はシェアを伸ばしました。

それから30年。

現状を考えると隔世の感があります。

2024年の半導体企業トップ10にはインテルしか残っていません。

1992年世界半導体市場ランキング
1992年世界半導体市場ランキング

現代の日本への示唆

この記事から今の日本が学べることはあるでしょうか?
ChatGPTに聞いてみました。

学べる主な教訓

  1. 構造改革・組織の再設計を恐れない
    IBMは単なるリストラだけでなく、工場をチームごとの独立採算制に再編。柔軟性と責任感を高め、生産性向上を達成。
    →現代の日本企業も、年功序列や硬直的な組織構造を見直し、フラットで機動力ある体制への移行が必要です。
  2. 「売れる製品を作る」時代へのシフト
    「品質が良ければ売れる」時代から、「消費者ニーズを先読みして開発」する時代へ。
    →日本でも、技術志向ではなく市場志向・UX志向の開発へのパラダイムシフトが求められています。
  3. 人材の活用法・報酬体系の再考
    IBMでは有能な人材が複数チームで働ける柔軟な配置、成果に応じた報酬が導入されていた。
    →日本でも「一括採用+年功序列」から、「専門性・プロジェクト単位での配置+成果報酬」へと再編が必要。
  4. 選択と集中の重要性
    IntelはDRAMから撤退し、MPUに集中して世界一を達成。
    →日本企業にも、すべてを守ろうとする姿勢ではなく、強みに資源を集中させる戦略が求められます。
  5. 「危機を機会に変える」マインドセット
    アメリカは冷戦終結・不況をバネに企業改革を加速させた。
    →日本も現在の「人口減・低成長・デジタル化の遅れ」などの構造的課題を、変革のトリガーにできるかが問われています。

まとめ

この記事が書かれたのは、日本ではバブルが終わりかけの時期。
アメリカの製造業が不調で、”アメリカの時代は終わった”と感じていたような時期だったように覚えています。

それから32年。
立場は完全に入れ替わり、アメリカ市場は政治的な要因はあれど好調。
日本は”失われた20年”、”失われた30年”などといまいちの状態が続いています。

この記事のアメリカのように復活の狼煙を上げるようなことを、自信を持って言えればよいのですが、どうでしょうか?

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すかいす
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駆け出しブロガー
デジタル回路の設計、検証をしていた半導体エンジニアです。論理設計やFPGA、生成AIなどの技術を自由研究のように楽しむブログです。学び直しや試行錯誤の記録もゆるく発信中。
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